家族を在宅で介護していくことについて、以下のような不安や悩みをお持ちではありませんか?
「何から始めればよいのかわからない」
「体力的に持つか心配」
「制度がわからない」
家族を在宅で介護していくことは簡単ではありません。しかし、介護が必要な家族との生活にはかけがえのないメリットも存在します。
本記事では、これから家族を在宅で介護する方や家族を在宅で介護して間もない方に向けて、在宅で家族を無理なく介護していく方法を紹介します。
在宅で家族を介護するために必要な準備や無理しないコツも紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
CONTENTS
家族を在宅で介護することが不安な理由

「家族を在宅で介護をするのが不安」と言われているのには、大きく2つの理由があります。
心身ともに痛めてしまうのでは?
1つ目の理由は、身体的・心的な負担です。
布団やベッドから本人を起こしたり排泄介助などの身体介助では、体を使って本人を支えたり、オムツ交換などどうしても腰や肩を痛めやすくなってしまいます。
妻が夫を介護するケースのように、自分より身長や体重がある方を介助する場合、より大きな負担がかかってしまうでしょう。介護者が力のある男性介護者でも、体に負担がかかります。
身体介助は毎日のように行う必要があるため、介護者に身体的負担がかかったり、体が思うように動かないことで本人が遠慮や我慢をすることから双方に心的負担がかかってしまったりというケースがあります。
本人の気持ちをくみとることができるだろうか?
2つ目の理由は、本人と介護者が衝突してしまうケースです。
介護者には、身体的な負担がつらかったり自分の時間が取れなかったりして、一定のストレスがかかっています。一方、介護されている本人も、疾病や障がいによる体の痛みや不便を感じてイライラしてしまう方が少なくありません。
在宅介護ではお互いの距離がどうしても近くなるため、気持ちに余裕がない状態が続くと、些細なきっかけでも衝突してしまうことがあるのです。
家族を在宅で介護するからこそ得られる3つのメリット

大変な在宅介護ですが、家族を在宅で介護するからこそ得られるメリットも大きく3つ存在します。
家族と一緒の時間を過ごせる
1つ目のメリットは、ひとつ屋根の下で同じ時間を過ごせることです。
朝起きてからご飯を一緒に食べて、夜に夜布団に入って「おやすみなさい」と声をかけ合うまで、毎日傍で過ごせるのも在宅で介護しているからこそ。
また、正月や夏祭りなどの季節行事を気軽に楽しめる点も在宅介護のメリットです。
別々の場所で暮らしていれば、連絡を合わせたりどちらかの住居に移動したりといった手間が発生します。しかし同じ家で暮らしていれば、「よし、行ってみよう」とお互いの気持ちさえ合えば、自分たちのタイミングで外出できるのです。
住み慣れた環境で過ごすことができる
2つ目のメリットは、本人が「新しい環境に馴染もう」と頑張らなくて済むことです。
在宅介護なら、住み慣れた地域や自宅でいつも通りの毎日を過ごせるため、老後の生活も自分のペースで過ごしていけるでしょう。また、友人や顔見知りの知り合いとの交流も継続できます。
介護入居施設に入居したりして新しい環境に身を置く場合、どうしても人間関係や集団生活のルールに自分を合わせる必要が出てくるでしょう。
もちろん、ほとんどの介護入居施設は、入居者のプライベートを守るために入居ルールや設備を整えていますが、新しい環境に慣れるまで一定のストレスがかかることは否定できません。
本人に負担をかけずに済む点も、家族を在宅で介護するメリットです。
経済的負担を軽減できる
経済的負担を軽減できることが3つ目のメリットです。
在宅で介護を続けていくと、介護施設に入所するよりも毎月の出費を抑えることができます。
要介護3の認定を受けている方が、特別養護老人ホームに入所した場合の1ヶ月あたりの費用の目安をみてみましょう。
特別養護老人ホームの多床室を利用した場合の目安
施設サービス費(1割負担) | 約21,360円(712単位×30日) |
---|---|
居住費 | 約25,650円(855円×30日) |
食費 | 約43,350円(1,445円×30日) |
日常生活費※ | 約10,000円 |
合計 | 約100,360円 |
※日常生活費とは、レクリエーション費用や理美容代などを含む費用で、入所先の施設によって金額が異なります。ここでは約10,000円と設定しました。
居住費は施設の種類や居室の種類によって上下します。一般的にユニット型の施設は従来型の施設より費用が高くなりやすく、多床室よりも個室の方が高くなります。
このように介護施設に入所すると毎月一定の費用がかかりますが、在宅介護を続けることでこの費用を抑えることができます。
家族を在宅で無理なく介護するためのコツ

家族を在宅で無理なく介護するためのコツは以下の2点です。
- 住環境を整える
- 介護者が休息できる時間も設ける
具体的に解説します。
住環境を整える
介護者と本人が暮らしやすい住環境を整えましょう。住環境が整備されると、介護者への体の負担が減って在宅介護を無理なく続けられるようになります。
住環境を整える際は、まず本人の居室環境から考えます。
- トイレや洗面所は遠くないか
- 日当たりや風通しはよいか
- 介護者が本人の様子を確認しやすい場所にあるか
もしも「日当たりのよい部屋にしたらトイレが遠くなってしまう」と移動距離がネックになっている場合は、手すりを設置して転倒を防ぐといった対処方法が効果的です。また車いすを利用する機会が多ければ、段差をスロープにしてもよいでしょう。
手すりの取り付け、床段差の解消といった改修工事は、介護保険の住宅改修の対象になる場合があります。住宅改修については、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所のケアマネジャーなどの専門家に相談してみましょう。
介護者が休息できる時間も設ける
介護者が心身に負担を感じたときは、本人から離れて休息する時間を設けてください。
介護者と本人が衝突してしまった場合など、一時的に離れた方がいいケースはあります。自分の感情を抑えたまま介護にあたると精神的な負担が大きくなるため、そういったときは相手から離れる時間をつくりましょう。
本人の安全を確保しながら距離をとる方法に、外部の介護サービスを利用する手段があります。
介護施設に入所して介護サービスを受けられるショートステイは、介護疲れを軽減する目的で利用してよい施設です。ショートステイ以外にも、介護保険で利用できる介護サービスとして、デイサービス、デイケア、認知症対応型デイサービスなど複数の種類があり、本人の状態や好みに合わせて選択できるのが強みです。定期的に通ってもらい、日中に介護者が一息つける時間を設けるのもよいでしょう。
ほかにも訪問介護や訪問入浴といった在宅で受けられる介護サービスも存在します。
家族が要介護認定を受けている場合は、担当のケアマネジャーさんや地域にある市役所の福祉課などに相談してみると、より詳しい情報を教えてもらえますので、ぜひ検討してみてください。
家族を在宅で無理なく介護するために自分自身を大切に

介護者は在宅介護を支えるキーパーソンです。
介護が必要な家族が安心して在宅で暮らしていけるように、介護者は自分自身を大切にしてあげてください。「完璧にこなそう」「私がやるしかない」と心理的ハードルを上げてしまうと、自分の心身に大きな負担がかかってしまいます。
同居の家族や友人、外部の相談機関といった周りの助けも借りて、無理せずに家族の方を在宅でみてあげてくださいね。
大阪の介護スクール「京進の資格取得 これから介護士」では、在宅介護に役立つ知識を習得できる初任者研修講座を開設しています。
初任者研修講座は、本記事で紹介した内容以外にも、在宅介護に必要な知識を得られる講座です。
開催校や開講スケジュールを自分の予定に合わせて選べるほか、2023年3月からは受講料を改定してさらに申し込みしやすい価格に設定しました。この機会にぜひ「これから介護士」の初任者研修で在宅介護に役立つ知識を習得してください。
